桜 ヶ 丘 の 家
Sakuragaoka House
桜ヶ丘の家
東西に続く丘陵地にある住まいの建替えの依頼である。
敷地には老朽化していたが、施主が愛着を持つ家が建っており、東側から緩やかなスロープを上った先に切妻の木造平屋が正面に見えるその家のありようは印象に残るものだった。古くはこの周りの土地が施主の所有であったことから考えると、当初は周囲にあまり建物はなく、丘の上にゆったりとその家が建っていたことが想像できた。家が地割に関係なくきちんと真南を向いて建っていたことからもそれがわかる。
新しい家はその家のありようを継承することがイメージの出発点となっており、それが切妻の木造平屋であったことから家の原型ともいえるようなものを自然と意識した。
施主と母、二人のための家である。母がいつもいるキッチンが心地の良い空間であること。濡れ縁+縁側を設けること。既存井戸の継続使用とその周囲に洗濯などの外部作業場の確保。土地東側の貸駐車場としての継続使用。それらが施主からの要求事項だった。
南に濡れ縁、北に作業用軒下空間を確保するために軒を深く出す。いつも使うキッチンは北の寒い位置ではなく、南側を向いて二人で楽しく使えるように中央に配置した。軒が深くなると内部が暗くなってしまう事への対応として中央を越屋根としてハイサイド窓を設けた。切妻形の天井はその光を家全体に届かせ、中にいる人に家に包まれている感じを与える。壁と天井一体の漆喰塗りによりそれは強調される。
北側の井戸まわりの作業空間が玄関へのアプローチから見えるのを避けるために木の縦ルーバーの衝立を設けている。東側の貸駐車場からの視線をカットするために、東側居室の窓は横長の高窓とし、縦ルーバーと共に東正面のアクセントとした。
そうした作業によってできたこの家が、意識の深いところで旧家屋と繋がりを得られていることを願う。
所在地 東京近郊 建築設計 八木建築研究所
主要用途 専用住宅 構造設計 増田建築構造事務所
構造規模 木造 地上1階 施工 キクシマ
敷地面積 620.56m² 竣工 2012年2月
延床面積 86.13m²